dancept1の備忘録

答弁権のエソロジー

第15回強制失踪委員会:強制失踪に関する委員会、十五回セッションを終結(日本の報告に対する総括所見における慰安婦問題への言及)


文書番号:CED18.12E

ノート:

  • 総括所見(最終見解)CED/C/JPN/CO/1 は、日本語訳が外務省ウェブサイトに掲載されるとおもわれるのでアップ時リンク等追加する。下記は「先行未編集版」(2018年11月19日)より当該部分を訳出( p. 5 、パラグラフ25 - 26、国連人権高等弁務官事務所ホームページへのリンク先参照)。

    いわゆる「慰安婦」強制失踪犠牲者の状況

    25. 委員会は、条約第8条、第12条、第24条を想起し、強制失踪犯罪の継続的な性質を強調し、強制失踪がいつ行なわれたかにかかわらず、被害者の正義、賠償および強制失踪の状況、調査の進捗状況と結果および失踪者の運命についての真実を知る権利を再確認したい。この点において、委員会は、強制失踪された可能性がある、いわゆる「慰安婦」の数に関する統計情報の欠如について、ならびにこれらの事件の加害者の捜査、起訴および有罪判決がないことについて懸念する。さらに、これらの女性に生まれた子どもの隔離と、そのような事件を調査することの締約国の拒否についての報告を懸念する。委員会は、いわゆる「慰安婦」問題に関する関連する事実および資料を開示することへの締約国による隠蔽または怠慢の報告に引き続き懸念する。さらに、条約第24条(5)に従う犠牲者に対する適切な賠償の不足を懸念し、「最終的かつ不可逆的に解決された」という締約国の立場は遺憾である。これは、不処罰を永続させ、犠牲者が真実を知り、正義、賠償、および再発防止の保証を得る権利を否定する(第1、8、12、24および25条)。

    26. 委員会は、強制失踪犯罪の継続的な性質を想起し、締約国に勧告する:

    (a)調査を実施し、真実や賠償への権利を保障するために、強制失踪された可能性がある、いわゆる「慰安婦」の数に関する正確な統計を生成すること、

    (b)これらの女性に生まれた子どもの隔離を含む、強制失踪された可能性がある、いわゆる「慰安婦」のすべての事件が、発生してからの経過時間や正式な申し立てがなくとも、遅滞なく徹底的かつ公平に調査されるようにすること、

    (c)加害容疑者が起訴され、有罪判決がなされた場合、その行為の重大性に従って罰せられるようにすること、

    (d)不法な連れ去り、強制失踪および/または身元代替の犠牲者であった可能性のある「慰安婦」に生まれた子どもを捜索し、特定するために必要な措置をとり、条約第25条第2項に基づいてもとの家族に戻されること、

    (e)事実に関するあらゆる情報および資料の開示をすること、

    (f)すべての被害者が条約第24条(4)および(5)に従って適切な賠償を受け、ジェンダー問題を考慮するようにすること、

    (g)真実への権利を保証すること。

    なお、一年以内のフォローアップ報告を要請された勧告は(パラグラフ48)、強制失踪の禁止(同12)、強制失踪罪(同14)、および基本的な法的保護手段(同32)である。

  • まさに勧告が指摘するとおり、日本政府の調査、開示は不じゅうぶんと言わざるを得ない。つまりこういうことだろう。勧告に<>を追記。

    (a)調査を実施し、真実や賠償への権利を保障するために、強制失踪された可能性がある、いわゆる「慰安婦」の数に関する<日本人を含む>正確な統計を生成すること、

    (b)<日本政府は、当時の法に照らしても違法と判断される事実に基づいて、情報公開にあたっては人権に配慮しつつ、日本人も含む>すべての事件が、発生してからの経過時間や正式な申し立てがなくとも、遅滞なく徹底的かつ公平に調査されるようにすること、

    (c)<当時の法に照らしても違法と判断される事実に基づいて>加害容疑者が起訴され、有罪判決がなされた場合、その行為の重大性に従って罰せられるように<し、朝鮮半島における強制失踪犯罪については、当時の法に照らしても違法と判断される事実に基づいて、女衒などの加害容疑者が起訴され、有罪判決がなされた場合、その行為の重大性に従って罰せられるように>すること<を韓国政府に求めること>、

    (d)不法な連れ去り、強制失踪および/または身元代替の犠牲者であった可能性のある「慰安婦」に生まれた子どもを捜索し、特定するために必要な措置をとり、条約第25条第2項に基づいてもとの家族に戻されること、<朝鮮半島における事例については、左記を韓国政府に求めること、>

    (e)事実に関するあらゆる情報および資料の開示をすること、

    (f)すべての被害者が条約第24条(4)および(5)に従って適切な賠償を受け、ジェンダー問題を考慮するようにすること、<朝鮮半島における強制失踪犯罪についても、左記を親や親族等による身売り等も、こんにちの人道的見地から考慮しつつ、韓国政府に求めること、>

    (g)真実への権利を保証すること。

    要するに「徹底的かつ公平に調査され」周知されることは日本政府にとっても肝要である。当局による「強制失踪(連行)」が行なわれていたのであれば<事実に基づいて立証>される必要があることを、この勧告も強調している訳である(?)。その場合においてのみ補償の可能性もなしとはしないものの *1 、それらを含んでも余りありそうな、こんにちにおける人道的見地に鑑みた、当局による…以外の日本側による補償はすでに過去の協定や合意等で実施済みである。「有識者、学者[…による]研究成果[…の]英訳も進められているのではないかと思います。そういったものを是非ともご覧いただければ」*2 などと呑気なことを言ってる場合ではない。まこと「真実への権利を保証」していただきたいものである。

  • 「緊急行動のための600以上の要請を受け、500以上の緊急行動を各締約国に発行した」。中国や北朝鮮が締約国になればいくつになるのであろうか(実際には「要請」すら困難か)。
  • 国連人権高等弁務官事務所ホームページ(英語))

    • 「条約機関の国々」
      日本の報告状況(英語
      CED - 強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約:

    • 「条約機関セッション」
      CED - 強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約
      第15回セッション(2018年11月5日 - 2018年11月16日)(英語
      作業プログラム(PDF
      日本:

      総括所見:CED/C/JPN/CO/1(先行未編集版)(2018年11月19日)(PDF)-「強制失踪に関する委員会 条約第29条(1)に基づき日本により提出された報告書に対する総括所見」

      要約記録:CED/C/SR.258(2018年11月14日)(html)-「強制失踪に関する委員会 第十五回セッション 258回会議要約記録」/CED/C/SR.257(2018年11月23日)(html)-「強制失踪に関する委員会 第十五回セッション 257回会議要約記録」

      声明:代表団代表による開会声明(2018年11月5日)(PDF)-「日本国政府表日本国外務省人権担当特命全権大使、岡村善文閣下による強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約第29条(1)に基づき締約国により提出された報告書の審査開会声明」

      代表団/代表者リスト:(2018年10月23月)(PDF)- MT-UN455

      課題リストへの返答:附属書(2)(2018年9月28日)(Excel

      課題リストへの返答:附属書(2018年9月28日)(Word

      課題リストへの返答:CED/C/JPN/Q/1/Add.1(2018年9月24日提出/2018年9月25日発行)(PDF)-「条約第29条(1)に基づき日本から提出された報告書に関する問題リスト 補遺 課題リストへの日本の返信」

      課題リスト:CED/C/JPN/Q/1(2018年7月22日)(PDF)-「条約第29条(1)に基づき日本から提出された報告書に関する課題リスト」

      市民社会組織からの情報(セッション用):日弁連(2018年6月22日)(PDF)-「強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約第29条(1)に基づく最初の日本審査に関する日本弁護士連合会報告」

      市民社会組織からの情報(セッション用):日本による軍事性的奴隷制度に徴用された女性のための韓国協議会[挺対協](PDF)-「強制失踪に関する委員会(CED) 15回セッション(2018年11月5日 - 11月16日)、日本」

      市民社会組織からの情報(セッション用):アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館(wam)(2018年11月22日)(PDF)-「日本の軍事性的奴隷制度問題(いわゆる「慰安婦」問題)」

      締約国報告:CED/C/JPN/1(2016年7月22日提出/2016年8月25日発行)(PDF)-「条約第29条(1)に基づき締約国により提出された報告書の審査 2012年予定の締約国報告書 日本」

      報告への付属書:附属書1 強制失踪犯罪に関連する刑法(抜粋)(PDF
       -「附属書1 強制失踪犯罪に関連する刑法(抜粋)」
       -「附属書2 出入国管理及び難民認定法(仮訳)(1951年10月4日政令第319号)」
       -「附属書3 武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律(抜粋)」
       -「附属書4 刑事訴訟法(抜粋) 」
       -「附属書5 逃亡犯罪人引渡法(抜粋)」

  • (外務省ホームページ)強制失踪委員会による総括所見の公表に際しての岡村善文政府代表による同委員会委員長宛の書簡(英文(PDF)/仮訳(PDF))及びファクトシート(英文(PDF)/仮訳(PDF))-「強制失踪委員会による対日審査総括所見の公表に際しての岡村政府代表発ジャニーナ委員長宛書簡」「強制失踪委員会による対日審査総括所見に関する日本政府の立場(ファクトシート)」

    強制失踪条約第1回政府報告審査に関する強制失踪委員会の総括所見(PDF)-「強制失踪に関する委員会 条約第29条(1)に基づき日本により提出された報告書に対する総括所見」

    強制失踪条約第1回政府報告審査における岡村善文政府代表の冒頭ステートメント(英文(PDF)/仮訳(PDF))(2018年11月)-「強制失踪条約第1回日本政府報告審査 岡村善文日本政府代表団長による冒頭ステートメント

    第1回政府報告(和文テキスト・別添(PDF)/英文テキスト(PDF)/英文別添(PDF))-「強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約(強制失踪条約)第29条に基づく第1回日本政府報告」

    条文 和文テキスト(PDF

  • (メディア報道より)

    • 共同通信(2018年11月20日

    • 東京新聞(2018年11月20日)(共同転電)

      産経ニュース(2018年11月20日

    • ジャパンタイムズ毎日新聞英語版(2018年11月20日)(共同転電)

      共同の転電だが上掲(および同内容の東京新聞)より詳しい。(性奴隷ではなく)「日本の戦時売春宿で働くことを強制された朝鮮人女性(Korean women who were forced to work in Japanese wartime brothels)」の書き出し。(毎度のことだが)在ジュネーブ国際機関日本政府代表部の職員によれば人権高等弁務官事務所に苦情を申し立てたとのことである。

      「国連パネル、元「慰安婦」に対する賠償の欠如を懸念」

    • ハンギョレ(2018年11月20日

  • 関連エントリ

  • 掲載URL:
    https://www.unog.ch/unog/website/news_media.nsf/(httpNewsByYear_en)/12B07770E00A2089C125834700516DB0?OpenDocument


COMMITTEE ON ENFORCED DISAPPEARANCES CLOSES FIFTEENTH SESSION
強制失踪に関する委員会、十五回セッションを終結

Adopts Concluding Observations on Reports of Japan and Portugal, and Follow-Up Observations on Mexico
日本とポルトガルの報告、およびメキシコのフォローアップに対する総括所見を採択

16 November 2018
2018年11月16日

The Committee on Enforced Disappearances this afternoon concluded its fifteenth session after adopting its concluding observations and recommendations on the reports of Japan and Portugal, and follow-up observations on the additional information submitted by Mexico.
本日の執行強制執行委員会は、日本ポルトガルの報告に対する総括所見と勧告、およびメキシコによって提出された追加情報に対するフォローアップ所見の採択後、15回セッションを閉会した。

The concluding observations and recommendations on the States reviewed during the session will be available on the session’s webpage next week.
セッション中に審査された締約国に対する総括所見と勧告は、来週セッションのウェブページで利用可能となる。

Koji Teraya, Committee Rapporteur, presented the Committee’s report on the session which was held from 5 to 16 November 2018, noting that it had adopted concluding observations on reports of Japan and Portugal and follow-up observations on the additional information submitted by Mexico; the list of issues on Chile, Italy and Peru; the follow-up report to concluding observations in relation to Bosnia and Herzegovina, Colombia, Cuba, Ecuador and Senegal; and the follow-up report on urgent actions.
寺谷広司、委員会報告者は、日本ポルトガルの報告に対する総括所見およびメキシコによって提出された追加情報のフォローアップ所見、チリ、イタリアおよびペルーに対する課題リスト、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コロンビア、キューバエクアドルおよびセネガルに対する総括所見へのフォローアップ報告、緊急行動に関するフォローアップ報告を採択したことに言及し、2018年11月5日から16日に開催された会議に関する委員会の報告を発表した。

The Committee had further decided to send its statement on draft articles on crimes against humanity to the International Law Commission before the 1 December 2018 deadline, and it had identified the first three countries with outstanding overdue reports which would be examined in the absence of a report. Also during the session, the Committee had adopted draft guiding principles on the obligation to search for and locate disappeared persons and had decided to launch a consultation process with all relevant stakeholders with a view to their adoption at the sixteenth session.
委員会はさらに、2018年12月1日の締め切り前に国際法委員会に人道に対する罪に関する条項草案に関する声明を送付することを決定し、報告なしで審査される大幅に期限を過ぎた報告による最初の三か国を確認していた。また委員会は、セッション中に、失踪者の捜索および特定への義務に関する指針草案を採択し、第16回セッションで採択を目指してすべての関連するステークホルダーとの協議プロセスを開始することを決定していた。

In her concluding remarks, Suela Janina, Committee Chairperson, recalled the powerful messages heard at the session from mothers of the disappeared during dictatorships in Argentina and Chile, and from mothers of recently disappeared from Mexico, and stressed that the achievements in the fight against enforced disappearance must not be taken for granted. The Chair recalled that the International Convention for the Protection of All Persons from Enforced Disappearance offered an array of tools for addressing enforced disappearance and said that the Committee had continued to develop its working methods regarding those tools, including though a follow-up dialogue, a procedure held for the first time with the delegation of Mexico.
彼女の結語において、スエラ・ジャニナ、委員会委員長は、アルゼンチンとチリにおける独裁政権中に失踪した母親と、最近メキシコから失踪した母親からのセッションで聞いた強力なメッセージを想起し、強制失踪に対する戦いにおける成果を当然のことと見なされるべきではないと表明した。委員長は、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約が、強制失踪に対処するための一連のツールを提供したことを想起し、委員会が、メキシコ代表団と初めて行なった手続を含む、フォローアップ対話を通じることを含め、これらのツールに関する作業方法の開発を継続していたと述べた。

The Committee had considered its follow-up procedure on urgent actions, the Chair said, noting that the Committee had received over 600 requests for urgent actions and had issued more than 500 urgent actions to different States parties. Turning to the draft guiding principles on the duty to search for and to locate disappeared persons and the decision to consult with all relevant stakeholders, Ms. Janina said that the call for submissions would be opened until 25 January 2019. The Committee had engaged with the Chair of the Working Group on enforced or involuntary disappearances to explore further ways to increase cooperation and had discussed issues of common interest with the Committee against Torture, said the Chair, finally expressing the Committee’s commitment to never stop to actively support the families of victims and to always be at the forefront of the fight against enforced disappearance.
委員会は緊急行動のための600以上の要請を受け、500以上の緊急行動を各締約国に発行したことを指摘し、委員会は緊急行動に関するフォローアップ手順を検討していた、と委員長は述べた。失踪者の捜索と特定の義務に関する指針とすべての関連するステークホルダーとの協議への決定に目を向け、提出要請は2019年1月25日まで開かれる、とジャニナ氏は述べた。最後に、被害者の家族を積極的支援を止めることなく、つねに強制失踪との戦いの最前線に立つ決意を表明し、連携を高めるためのさらなる方法を模索するために強制的または非自発的失踪に関する作業部会議長と関わり合い、拷問禁止委員会との共通の関心事項を議論していた、と委員長は述べた。

Meeting summaries of all public meetings held during the fifteenth session of the Committee on Enforced Disappearance can be found here, and archived meeting webcasts here.
強制失踪に関する委員会の第十五回セッション中開催されたすべての公開会合の会議要約はこちら、アーカイヴされた会議ウェブキャストはこちらで確認できる。

The Committee will hold its sixteenth session at the Palais Wilson in Geneva from 8 to 18 April 2019.
委員会は、2019年4月8日から18日までジュネーブのパレウィルソンで16回セッションを開催する。


2018年11月20日
2018年11月24日(国連人権高等弁務官事務所ホームページ更新反映)
2018年12月03日(外務省ホームページ更新反映)

*1:可能性といえば、強制失踪や被害者に “may(~の可能性がある、~かもしれない)” が入れられている。これまでの各条約機関の最終見解の文言は単に「犯された(perpetrated / committed)」だったとおもわれ…「性的奴隷制度」が使われていないことも含め、反論がすこしは効を奏している?。

*2:人種差別撤廃委員会第10回・第11回対日審査二日目における大鷹大使発言(関連エントリ 2018-08-16 UN Web TV 参照)。