第96回人種差別撤廃委員会:委員会メンバー
下記エントリ続き。
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国連人権高等弁務官事務所ホームページ(英語)
「OHCHR | 委員会メンバー」
メンバー名 | 国籍 | 任期 12月31日まで |
シウヴィオ・ジョゼ・アウブケルキ・イ・シウヴァ氏 Mr. ALBUQUERQUE E. SILVA Silvio José |
ブラジル | 2022年 |
(委員長) ヌールディン・アミール氏 Mr. AMIR Noureddine |
アルジェリア | 2022年 |
アレクセイ・S・アフトノーモフ氏 Mr. AVTONOMOV Alexei S. |
ロシア連邦 | 2020年 |
マーク・ボシュイ氏 Mr. BOSSUYT Marc |
ベルギー | 2022年 |
(副委員長) ホセ・フランシスコ・カリ・ツァイ氏 Mr. CALI TZAY Jose Francisco |
グアテマラ | 2020年 |
鄭 鎮星(チョン・ジンソン)氏 Ms. CHUNG Chinsung |
韓国 | 2022年 |
ヴィクトワール・ファティマタ=ビンタ・ダー氏 Ms. DAH Fatimata-Binta Victoire |
ブルキナファソ | 2020年 |
バカリ・シディキ・ディアベイ氏 Mr. DIABY Bakari Sidiki |
コートジボワール | 2022年 |
(報告者) リタ・イザック・ンジャエ氏 Ms. IZSÁK-NDIAYE Rita |
ハンガリー | 2022年 |
洪 恵子氏 Ms. KO Keiko |
日本 | 2022年 |
ガン・クト氏 Mr. KUT Gun |
トルコ | 2022年 |
(副委員長) 李 燕端(リ・イェントアン)氏 Ms. LI Yanduan |
中国 | 2020年 |
ニコラス・マルガン氏 Mr. MARUGÁN Nicolás |
スペイン | 2020年 |
(副委員長) ゲイ・マクドゥーガル氏 Ms. MCDOUGALL Gay |
アメリカ | 2020年 |
イエメルヘ・ミント・モハメド氏 Ms. MOHAMED Yemhelhe Mint |
モーリタニア | 2020年 |
(副委員長) パストル・エリアス・ムリジョ・マルティネス氏 Mr. MURILLO MARTINEZ Pastor Elias |
コロンビア | 2020年 |
ヴェーレン・アルベルサ・シェファード氏 Ms. SHEPHERD Verene Albertha |
ジャマイカ | 2020年 |
ヤン・カム・ジョン・ヤン・シク・ユエン氏 Mr. YEUNG SIK YUEN Yeung Kam John |
モーリシャス | 2022年 |
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鄭鎮星(チョン・ジンソン)委員(韓国)
挺対協の共同代表も務めた。昨年の改選(委員の半数九名)で120票(第六位)を集め選出 *1(洪恵子委員の項の「外務省報道発表」リンク先参照)。日本審査を前に韓国の最終兵器登場というところだが、日本も賛成したのであろうか。東亜日報の記事(後述)が取り上げている著書(2004年)などの邦訳がある *2 。下記は同書日本語版『日本軍の性奴隷制:日本軍慰安婦問題の実像とその解決のための運動』(論創社、2008年)のウェブサイトより *3 。
1953年生まれ。ソウル大学社会科学大学社会学科卒業、シカゴ大学にてPh‐D取得。徳成女子大学教授を経て、現在ソウル大学教授・同大学社会発展研究所長。また国連人権小委員会委員を経て、2008年8月より国連人権理事会諮問委員会委員(副議長) 。
加えて上掲「委員会メンバー」サイトのリンク先バイオグラフィ(Word)によれば、「作業言語(Working languages)」に英語、朝鮮語、日本語。九州大学客員教授(2016年)、日韓歴史共同研究委員会メンバー(2007年 - 2010年)*4 、東京大学社会科学研究所客員教授(2003年)、(日本の)国際文化会館アジア・リーダーシップ・フェロー・プログラム研究員(2003年)などもある。このバイオには「人権条約機関への候補者の経歴データフォーム」とあるのだが、申し分ない経歴なので掲載不要ということだったのであろうか(?)、挺対協についての記述はない *5 。
「チョン・ジンソン「証拠資料無尽蔵... 慰安婦強制動員を証明 さらに頑張りが必要」 『日本軍性奴隷制度』改訂版出版 チョン・ジンソン・ソウル大教授」(東亜日報/2017年6月8日)
彼女は1992年に国連人権小委員会で韓国人慰安婦の被害の事実を初めて知らせ、国連決議案採択を引き出すこともした。
ちょうど戸塚悦朗弁護士も提起した年ですね(1992年2月)。
日本軍慰安婦と関連した国外資料を発掘しようとする彼女の試みが挫折したこともあった。ソウル大学人権センターで女性家族部のサポートを受けて進めていた「日本軍慰安婦国外資料調査」が2015年12月、日韓慰安婦の合意直後の昨年1月にキャンセル通知を受けた [*6] 。「提案書がお粗末」という釈然としない理由だった。同時期女性家族部は、ソウル大学人権センターだけでなく、ナヌムの家、韓国挺身隊問題対策協議会など慰安婦合意に反対する団体に支援を中断して論議になった[*7]。
「国外資料を発掘しようとする」試みの話題になっているが、別の箇所で「資料は無尽蔵」といいつつ「2004年以後、発掘した資料を追加」した改訂版の売りもボルネオの事例である *8 。「『慰安婦募集に軍が介入した証拠はない』という安倍日本首相の妄言を覆す資料」*9 ということだろうが、ことに朝鮮半島以外での軍規違反の事例についてはだれも否定していないだろう *10 。朝鮮半島での強制動員を証明する資料が出てこないことの表れ、というか出てこないので以前から韓国国外の調査にシフトしていたように見える。今年二月の「日本軍慰安婦国際カンファレンス」で、これまた「初公開」として発表されたものの、日本ではほとんど相手にされなかった騰衝(中国のミャンマー国境近郊)での「朝鮮人慰安婦虐殺」映像の調査にも関わっていたようである *11 。
学者として日本軍慰安婦問題を研究してきた彼女は、「日本との外交で優位を占めるためには歴史的事実という「武器」を握ってなければならない」と助言した。[記事写真キャプションより]
「外交で優位を占めるには?」と記者が「助言」を求めた可能性もあるが、そうでもないのだろう。前出のバイオによれば韓国外交部外交政策諮問委員会のメンバーでもある。当委員会も「外交政策」に大いに利用する算段とおもわれる。「二国間問題を越えている」という、このところの韓国政府の見解よろしくボルネオやインドネシアなど、得意の(?)韓国国外の事例を絡めてくるかも。
(聯合ニュース/2017年6月23日)
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リタ・イザック・ンジャエ委員(ハンガリー)
昨年の改選で就任。国連マイノリティ問題に関する特別報告者(2011年 - 2016年)(「委員会メンバー」サイトのバイオグラフィ(Word)参照)。下記はこちらも東亜日報(2016年1月28日)。
「イザック、「日本のヘイトスピーチを放置すれば集団虐殺呼ぶ危険」 国連「マイノリティ問題」イザック報告官 嫌韓デモ規制を促す...「在日韓国人の子どもたちへのいじめに心痛める」」記事本文(東京/チャン・ウォンジェ特派員)では北村聡子弁護士が関東大地震時の「朝鮮人虐殺」に言及しているが、イザック・ンジャエ氏が見出しのような発言を行なったとは次の北村弁護士による報告(反差別国際運動(IMADR)ウェブサイト)共々伝えていない。また後者では訪日後、氏の SNS が炎上したことを報じている。「在日コリアンに対する差別的なメッセージが多数書き込まれた」。2018年4月にも「世系に基づく差別撤廃のための国際協議会」「世系に基づく差別撤廃のための国際シンポジウム―国連と市民社会の協力」(いずれも反差別国際運動が共催)出席のために来日している *12 。
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洪 恵子委員(日本)
自国の審査会自体には加わらない決まりとおもわれる。昨年の改選で日本人として初めて選出された。132票のトップ当選のようである。ジャパンタイムズによれば父親は中国人とのこと。
「南山法学部教授、日本人初の国連反差別パネル務める」(ジャパンタイムズ/2017年6月23日)(共同)
産経ニュース(2017年6月23日)(共同)
(追記)外務省『外交青書 2018』のコラム「人権分野において、国際社会で活躍する日本人」で委員選出について寄稿している。
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李 燕端(リ・イェントアン)委員(中国)
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日本で「なかった派」に蛇蝎のごとく嫌われているのみならず「リベラル」派にも批判されている、国連人権委員会(当時)の差別防止・少数者保護小委員会への報告書(1998年)をまとめたご本人。2015年の改選で就任(副委員長)。「委員会メンバー」サイトのバイオ(Word)は、人権高等弁務官事務所、Web アーカイブ掲載のどちらも当方の環境では読めない *13 。
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下記は2015年の改選の際の反差別国際運動(IMADR)の記事(ジュネーブ事務局/小松泰介氏)。懇意にしていた(?)古参委員の退任を惜しみつつ、この年改選された委員から上述の李氏、マクドゥーガル氏以外に、マルガン氏(スペイン)、モハメド氏(モーリタニア)、シェファード氏(ジャマイカ)の五名についての紹介がある *14 。マクドゥーガル氏については、くだんの報告書に関する言及はない。
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関連エントリ
(日本審査)
(中国審査)
2018年8月9日
*1:2015年7月現在、署名国数 87、締約国数 178 。九位で当選したコートジボワール(ディアベイ氏)は96票。
*2:『証言 強制連行された朝鮮人慰安婦たち』(韓国挺身隊問題対策協議会・挺身隊研究会(編)、従軍慰安婦問題ウリヨソンネットワーク(訳)/明石書店、1993年)の編集、執筆にも関わっている。この本では出版後二十年以上たって、2014年に週刊文春が掲載した同書の慰安婦聞き取り調査に参加していた安乗直(アン・ビョンジク)ソウル大学名誉教授のインタビュー記事がもととなり、訴訟騒ぎが起こったりしている。
*3:
*4:「教科書小グループ」に参加していた模様。
*5:追記:下記記事によれば(挺対協は「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)」になった筈なのはともかく)、チョン委員は「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)で」「活動を続けている」そうである。
(朝鮮日報/2018年8月31日)
*6:「日本の高度な戦略」ねぇ(下記日韓合意に関する談話)。
(レコードチャイナ/2016年1月3日)
*7:いずれもムン政権で復活か。なお昨年第60回拷問禁止委員会での対韓審査への韓国「64」NGOの合同報告では、「日本軍の性的奴隷制度」ユネスコ世界遺産登録への資金援助打ち切りをチクっていた。
*8:ちなみにこの資料の内容については日本ですでに雑誌掲載され書籍でも取り上げられていた。韓国でもこの書籍が翻訳されていたにもかかわらず、画期的な「新発見」としてあわてて記者発表を行ない「性急な発表」「成果水増し」の批判を浴びていた。十年も経てば誰も憶えていないだろうという。
(中央日報/2007年4月1日)
(聯合ニュース/2007年4月12日)
「ソウル大「研究の基本」喪失懸念」
*10:騒いでる韓国に引っ張られて朝鮮半島のみを念頭に話しをしてしまう日本政府も不味いのだが。
*11:聯合ニュース(2018年2月27日)この件に関する調査で良く知られているものとしては、浅野豊美教授による1999年の報告がある:『「慰安婦」問題調査報告・1999』( p. 61 - 88 )。
*12:
*13:国連公式文書システム(英語)に2015年委員選挙のドキュメントがあった( CERD/SP/78 )。マクドゥーガル候補のバイオは p. 18 - 。「主な専門的活動」に、「国連人種差別撤廃委員会[United Nations Committee on the Elimination of Racial Discrimination])専門家メンバー(1998年 - 2001年)」とある。差別防止・少数者保護小委員会(Sub-Commission on Prevention of Discrimination and Protection of Minorities)、のちの人権促進・保護小委員会(Sub-Commission on the Promotion and Protection of Human Rights)選挙のドキュメントもあり( E/CN.4/1996/104 )、同氏バイオは p.108 - 。いずれにもロンドン・スクール・オブ・エコノミクス LL.M.(1978年)などの記載がある。なお後者には日本からの波多野里望氏、横田洋三氏の名も見える。
CERD/SP/78:「2016年1月19日に任期満了となる者を交代するための人種差別撤廃委員会メンバー九名の選挙」(2015年4月30日)(英語(PDF))
E/CN.4/1996/104:「差別防止・少数者保護小委員会メンバーの選挙」(1995年12月13日)(英語(PDF))
*14:この年改選されたはずの残る四名には言及していない。