文書番号:(無し)
ノート:
- 関連する情報を少し整理。下記も参照。
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国連人権高等弁務官事務所ホームページ「プライバシーに関する特別報告者」発端となった公開書簡「プライバシーに関する権利に関する特別報告者のマンデート」(Ref. OL JPN 3/2017)が、「「共謀罪」法案に関する日本への書簡(Letter to Japan on the the ‘conspiracy’ bill)」として掲載されている(2017年5月18日)。プライバシーに関する特別報告者ジョー・ケナタッチ氏(2015年7月 - 、マルタ)のバイオグラフィ等も掲載。氏による「書簡」と「反論」の日本語訳(および「日本政府見解」)については下記参照。
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アワープラネット・ティービー
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野党が「官房長官の声明に対する反論」として取り上げた、日本政府の「見解」に対するケナタッチ氏の「反論」は、「書簡」についての菅官房長官の記者会見に関するロイター英語版記事への感想を求めた海渡雄一弁護士の質問に対するEメールによる回答ということだった(下記産経ニュース等)。
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産経ニュース(2017年6月14日)
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ロイター英語版記事(2017年5月22日12:37am EDT)
5月22日版アーカイブより(以下で触れるが、23日にケナタッチ氏の「反論」などが追記され更新されている)。※ ロイター日本語版記事(2017年5月22日)
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民進党ホームページ「ニュース」(2017年5月25日)「ネクスト法務大臣」の、「書簡」や「反論」は「官房長官がいう『個人の資格』で出されたものではなく、国連人権理事会から任命され、集団的に検討された公開書簡」というのも、幾分バカっぽいというか、ぎこちない説明(笑)。一般にわかりやすく説明しづらいんだろうが、少なくとも「(ケナタッチ氏の)反論」は私信(を記者会見で公開)で政府は受け取っておらず、政府としては取りあえずああそうですかということだろう。
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下記によれば「反論」について菅官房長官は、「何か背景があるのではないかと思わざるを得ない」と勘ぐっていた。
産経ニュース(2017年5月24日)5月22日16時16分に海渡弁護士がケナタッチ氏からの「反論」メールを受け取り、23日に記者会見で公表するのだが、早くも東京新聞(ロンドン/小嶋麻友美記者)は23日朝刊(電子版アドレスは 2017052302000119 )、海渡弁護士がケナタッチ氏に感想を求めた記事を掲載していたロイター英語版(東京/リンダ・シーグ記者)自身も5月22日12:37am EDT(5月23日1:37am JST)に、ケナタッチ氏に「電子メールで取材」して記事に(ロイターは「メール」のコメントを加えて更新)している。手際が良すぎる気もするのだが、勘ぐり過ぎか。
どちらの記事も、海渡弁護士への回答に含まれていた文言そのままを掲載しており、記者会見を控えた海渡弁護士が速攻で「反論」メールを提供し、メール「取材」とはケナタッチ氏に事実確認したという程度が実態ではないか。ロイター英語版更新記事(2017年05月22日12:37am EDT)
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「書簡」に対する日本政府見解(外務省ホームページ)
「外交政策」 > 「日本の安全保障と国際社会の平和と安定」 > 「国際組織犯罪・テロ・海上の安全保障・情報セキュリティ」 > 「国際組織犯罪に対する国際社会と日本の取組」(2017年5月18日)すでに衆院法務委員会で可決の見通しで速やかな介入が必要との判断とは言え、政府の見解のとおり一方の主張のみを取り入れていきなり公開するのはフェアではない。しかし、ケナタッチ氏が「反論」で指摘したように、政府の見解も五つのポイントに明確には回答していない(反応は速攻だったが)。 -
政府としては今回の見解は「回答」ではなく「抗議」であり、「御説明する用意がある」としているのだが、本件は人権理事会に報告書として提出されるであろうから、どのみち各項目について逐次回答することになるだろう *1 。もとになったシーグ記者による報道にせよ、こちらは単なる推測だが海渡弁護士によるケナタッチ氏への質問にせよ、政府の見解は「回答」ではないことには(これも推測だがおそらく意図的に)触れず、特別報告者と政府の対立をさかんに煽っていたという感がある。菅氏が会見で「回答」でないことにどの程度言及していたのかはわからないが、見解の内容を確認していなかったとしたら手抜き報道だろう(外務省見解の公開は5月18日、菅氏の会見は5月22日)*2 。
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いずれにせよ国連が想定する特別報告者の「介入」には、人命に関わるようなケースで直ちに必要と判断されることも想定される。個人であれ団体であれ、名前と連絡先の詳細とともに該当する国と違反を示すEメールを送るだけで、(検討の上)対応することになっている。そのしくみを活用したのがこちら。
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ヒューマン・ライツ・ナウ
本件は(も?)、ヒューマン・ライツ・ナウが「仕掛けた」ということらしい。プライバシーが危機にさらされる、国連NGOとして当然の行為ということだろう。4. 特別報告者の介入の目的は何ですか?
これらの書簡の第一の目的は、締約国当局が、可能な限り早期に申し立てを知らされ、人権侵害を調査し、あらゆる人権侵害を終了または防止する機会を確保することによって、プライバシー権の促進と保護に貢献することである。特別報告者は、緊急申し立てとその他の書簡の両方によって、政府に対し、申し立てられた事件を調査、対応、結果を伝える、すべての適切な措置をとるよう要請する。--- 前出「プライバシーに関する特別報告者」ウェブページからのリンク「OHCHR | 苦情の提出方法」
下記に経緯がアップされている。
ヒューマン・ライツ・ナウ・ホームページ「ニュース & イベント」(2017年05月19日)ヒューマンライツ・ナウは、共謀罪(テロ等準備罪)に対し、懸念を表明する声明を3月17日に公表し、
5月15日に国連宛声明を送付し、国連の関係する特別報告者に対し、緊急に事態に介入するよう要請をしました。
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ヒューマンライツ・ナウ声明(国連公式文書システム)
「『テロ等準備罪』法案に反対する声明」(A/HRC/35/NGO/49)5. 勧告ヒューマンライツ・ナウは、日本国憲法第13条、第19条、第21条ならびに日本国政府の批准を受けた市民権および政治的権利に関する国際規約第17条、第18条、第19条、第21条および第22条のもとで保証されている良心の自由、プライバシーの権利、集会の自由、結社の自由、表現の自由と矛盾する、「テロリズムおよびその他の行為の準備の罪」法案に深く懸念を抱いている。
日本政府は、恣意的な捜査と処罰のために市民の表現の自由やその他の自由を侵害するだけでなく、協力を抑えつけることによってNGOの仕事をひどく妨げる恐れのある「テロ等準備罪」を追加する「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」改正する法案を承認しないことを強く求める。代わりに、日本はすでに批准しているテロ対策に関する13の条約と、すでに制定されている関連する国内法を適切に適用し実施することにより、市民のテロに対する安全を確保すべきである。
我々は、国連人権理事会および関連する国連特別報告者に、緊急の介入を行い、遅滞なくその政策を再考するよう政府に呼びかけるよう強く促す。
5. Recommendations
Human Rights Now is deeply concerned about the “Crime of Preparation for Terrorism and Other Acts” bill which conflicts with the freedom of conscience, right to privacy, freedom of assembly, freedom of association and freedom of expression guaranteed under the Articles 13, 19 and 21 of the Constitution of Japan, and Articles 17, 18, 19, 21 and 22 of the International Covenant on Civil and Political Rights which was ratified by the Japanese government.
We strongly call on the government of Japan not to approve the bill to revise the Act for Punishment of Organized Crime and Control of Crime Proceeds to add the “Crime of Preparation for Terrorism and Other Acts” which is likely to violate citizens’ freedom of expression and other freedoms due to arbitrary investigation and punishment, as well as severely hinder the work of NGOs by stifling collaboration. Instead, the government should ensure citizens’ safety against terrorism by properly applying and implementing the 13 treaties regarding anti-terrorism which Japan has already ratified6 and their related domestic laws which have already been enacted.
We urge the UN Human Rights Council and relevant UN special rapporteurs to make an urgent intervention calling on the government to reconsider its policy without delay.
三日後の5月18日には、特別報告者から安倍総理へ「書簡」が送付され、「書簡」全訳が、こちらにもすぐに掲載されている(前出「ニュース & イベント」(2017年05月23日))
「日本はすでに批准しているテロ対策に関する13の条約と、すでに制定されている関連する国内法を適切に適用し実施することにより」、政府がテロ対策(も含まれる)と言っているTOC条約の義務を履行出来るのか、当方には判断できる知識はない。また、ケナタッチ氏は問題点を指摘しているが(「森林法と著作権法が「組織犯罪やテロと全く無関係」」*3 )ヒューマンライツ・ナウのように既存の法律で対応すべしと言っている訳でもないだろう。いずれにせよ居酒屋で竹の子取りの相談をしただけで逮捕されるともまた、おもわないのだが、今後とんでもない政権が誕生した際に、どのように運用される可能性があるのかは少しは念頭に置いておく必要があるかも。
2017年7月28日