dancept1の備忘録

答弁権のエソロジー

第37回人権理事会:ハイレベル・セグメントにおいて13名の高官から聞く


文書番号:HRC18/010E

ノート:

  • 日本から(閉会式が行われたばかりということでもなかろうがスピードスケートの五輪銅メダリスト)堀井学外務政務官が発言。

  • 日本による慰安婦問題への言及
    本会議要約ではばっさりと「要約」されているが *1 、韓国側の動きが予想された、あるいはあったため、慰安婦問題にかなりの分量を割いて日韓合意について説明している(下記掲載の関連エントリ 2018-02-26 02:00 、2018-02-22 および、声明の詳細は外務省ホームページへのリンク先参照)。

    前日の康(カン)韓国外交部長官の演説は、日本を名指ししないことで一応「非難」を「控える」体にしてはいるのだが *2 、今回も「互いに非難・批判することを控えることとしました」と言及するいっぽうで、韓国側が蒸し返して来ているとはいえ、日本側も「批判」を行なっているという *3 。当要約のように韓国への名指し無しの表現も工夫出来そうだが、日本側は割と開けっぴろげに「批判」している *4 。議論(非難・批判?)はハイレベル・セグメントを受けての討論に続く(関連エントリ 2018-02-28 参照)。

    こちらもばっさり「要約」されているが、2016年以降は会合でも吉田証言について説明して来ており、今回も書名にまで言及してかなり詳細である。この件で付け加えるならば(これまでも当方が知る限り触れていないが)、クマラスワミ報告 *5マクドゥーガル報告との関連についてまで指摘することくらいか。

    幸か不幸かいつもの蒸し返しのお陰で日本側の反論の機会も増えそうである(しかも韓国が合意に縛られているのは事実だ)。韓国側の不誠実な態度を指摘するのも良いが *6 、分量を割くなら日韓基本条約を確認した上で、「軍の関与」の内容や、何に対する謝罪とお見舞金・基金なのかも明確にしてもらいたい。こちらから更に油を注ぐことにもなり、最後のなどは玉虫色にしておきたいかもしれないが、日本側だけ曖昧にしておいても状況はひどくなる一方だろう。

  • なお当要約は、「慰安婦問題」を「最後に」と「要約」しており、それ以降のミャンマー難民受け入れへの言及などが割愛されている。

  • ランブリニディス欧州連合人権特別代表が、今セッションにおいて日本とともに「北朝鮮における制度的権利侵害」に取り組むことを声明。日本と合わせて今回のハイレベル・セグメントにおいては五か国(地域)目の北朝鮮への言及。

  • 外務省ホームページ

  • 各社報道より

    共同通信(2018年2月28日)

    北朝鮮その他への発言には言及せず。産経新聞(2018年2月28日)

  • UN Web TV

  • 関連エントリ

掲載URL:
https://www.unog.ch/unog/website/news_media.nsf/(httpNewsByYear_en)/4BFA936D5811DCDBC12582410061F192?OpenDocument


HUMAN RIGHTS COUNCIL HEARS FROM 13 DIGNITARIES IN HIGH-LEVEL SEGMENT
人権理事会、ハイレベル・セグメントにおいて13名の高官から聞く

27 February 2018
2018年2月27日

The Human Rights Council this afternoon heard statements from dignitaries of 11 countries and two organizations and closed the second day of its high-level segment.
この午後の人権理事会は、11か国2組織の高官からの声明を聞き、ハイレベル・セグメント2日目を閉会した。

[…]

Manabu Horii, Parliamentary Vice-Minister for Foreign Affairs of Japan, said Japan was committed to establishing the rule of law and human rights in its region. Japan and the European Union would draft a resolution on the human rights situation in the Democratic People’s Republic of Korea.
堀井学日本国外務政務官は、日本は、その地域における法と人権の支配を確立することにコミットしていると述べた。日本欧州連合は、北朝鮮の人権状況に関する決議を起草する。

High-Level Segment
ハイレベル・セグメント

[…]

STAVROS LAMBRINIDIS, European Union Special Representative for Human Rights, said that in 2018 no policy to ensure tolerance would succeed without human rights at its core. Mr. Lambrinidis affirmed that the promotion and protection of human rights was at the centre of multilateralism and at the very core of the European Union. The European Union reaffirmed its support for reforms that would make the Human Rights Council as effective as possible. During the current session, the European Union, along with Japan, would pursue initiatives to address systematic rights violations in the Democratic People’s Republic of Korea. The Bloc would also present a resolution on Myanmar recalling major concerns about actions being taken against minority groups in that country. The Syrian conflict remained a clear priority and the European Union would advocate for increased action to find a solution. People across the world relied on the Council to protect their dignity and rights, and as such, rights must not be politicized. The promotion and protection of rights required an accountability framework and the European Union continued to support the International Criminal Court. European Union Member States assured support for civil society organizations and those individuals standing up in defense of human rights. The Bloc would continue to support United Nations Member States enacting laws to defend rights defenders. The repression of minority groups was condemned.
スタヴロス・ランブリニディス欧州連合人権特別代表は、2018年において寛容を保証する政策はその核心に人権無しでは成功しないと述べた。ランブリニディス氏は、人権の促進と保護は多国間主義の中心であり、欧州連合の核心であると断言した。欧州連合は、人権理事会をできるだけ効果的にする改革への支持を再確認した。現在のセッションにおいて欧州連合は、日本とともに北朝鮮における制度的権利侵害に取り組むためのイニシアチブを追求する。同連合はまた、ミャンマーに関する、同国においてマイノリティに対してとられた措置についての主要な懸念を想起する決議案も提出する。シリア紛争は依然として明確な優先課題であり、欧州連合は解決策を見い出すために行動を強化することを主張する。世界中の人々は、彼らの尊厳と権利を守るために理事会に頼っているため、権利は政治化されてはならない。権利の促進と保護には説明責任の枠組みが必要であり、欧州連合国際刑事裁判所を引き続き支持した。欧州連合加盟国は、市民社会組織や人権を擁護する立場に立っている個人の支援を保証した。同連合は、国連加盟国が権利擁護者を擁護する法律を制定することを引き続き支援する。少数派の抑圧は非難された。

MANABU HORII, Parliamentary Vice-Minister for Foreign Affairs of Japan, said the world was besieged by the challenge of fundamental rights through protracted conflicts, massive flows of refugees and other major challenges. Significant efforts were required to maintain efforts against these plagues. Japan was undertaking its role in this direction, including through participation in many United Nations and international fora, as well as through technical cooperation. Despite its efforts, issues continued to persist. Japan would work with relevant countries where democracy was unstable. Regarding Rakhine state in Myanmar, Japan had conveyed to the Government the importance of cooperating with the international community. In addition to humanitarian assistance to Myanmar, in order to improve the situation and in view of the complex situation, Japan was implementing development assistance and other initiatives that helped realize harmony among the communities. These included the return of the displaced in Rakhine state. Japan was committed to establishing the rule of law and human rights in the region. The Democratic People’s Republic of Korea was urged to end gross human rights violations, which included abductions of Japanese citizens. This issue had to be resolved. Mr. Horii informed that Japan and the European Union would draft a resolution on the human rights situation in the Democratic People’s Republic of Korea and would ask for the support of all Member States to this effect. Finally, Mr. Horii announced that the Government of Japan had dealt with the comfort women issue via diplomatic efforts in 2015, by which it had been confirmed that this issue had been resolved finally and irreversibly.
堀井学日本国外務政務官は、長期にわたる紛争、大量の難民の流入およびその他の主要課題を通じた基本的権利の課題によって世界は包囲されていると述べた。これらの厄災に対しての取り組みを維持するためには多大な努力が必要とされた。日本は、多くの国連や国際フォーラムへの参加を通すことに加え、技術協力を通じてこの方向性を担っていた。その努力にもかかわらず問題は持続し続けた。日本は、民主主義が不安定な関連諸国と協力する。ミャンマーにおけるラカイン州に関して、日本は国際社会との協力の重要性を同政府に伝えていた。ミャンマーへの人道的援助に加え、状況を改善するために複雑な状況に鑑み、日本はコミュニティ間の調和を実現するのに役立つ開発援助やその他の取り組みを実施していた。これらには、ラカイン州における避難民の帰還も含まれていた。日本は、この地域における法と人権の支配を確立することを約束した。北朝鮮は、日本国民の拉致を含む重大な人権侵害を終わらせるよう強く促された。この問題は解決されなければならなかった。堀井氏は、日本欧州連合が、北朝鮮の人権状況に関する決議を起草し、この発効へ全加盟国の支持を要請すると告げた。最後に堀井氏は、日本政府が2015年に外交努力により慰安婦問題に対応し、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されたことが確認されたことを発表した。

[…]


2018年3月1日

*1:ただし他の項目と、とくに差がある訳でもないだろう。後述のとおり声明の終わりの方の項目などは割愛されてしまっている。

*2:なにを持って「非難・批判」とするのかというのもあるのだが、「性奴隷」を持ち出すのも「非難」だろう(女性差別撤廃委員会)。外務省が抗議すると女性家族部は妙な言い訳をしていた。

*3:追記:翌日の討論での志野大使による発言「慰安婦問題を提起すべきではないと定めた」(関連エントリ 2018-02-28 01:00 参照)であれば、一連の日本による韓国「批判」と整合する。

*4:ただし、大使館前の慰安婦像については触れていない。

*5:外務省は朝日新聞が誤りを認めると、ク氏に当該部分の記述の撤回要請を行なっている。人権委員会はこの報告を含む作業を歓迎し報告を留意する採択を行なっており、すでに氏は特別報告者の立場でもないのだが、しばしば議論になる「独立した立場」であるところの(元)特別報告者本人に<誤り>を認めさせる意味はあるというところ。ク氏は撤回を拒否した。共同通信インタビューによれば、「元慰安婦への聞き取り調査などを踏まえ」てということである。

*6:これは実際には今回の日韓合意に限定しないと時間がいくらあっても足りないという(苦笑)。