dancept1の備忘録

答弁権のエソロジー

第37回人権理事会:ハイレベル・セグメントを継続し16名の高官から聞く


文書番号:HRC18/006E 

ノート:

  • 日本も日韓慰安婦合意により相当なダメージを負ったが、ここでもそれなりの政治的効力は発揮。事前にも発言が観測されていた康京和(カン・ギョンファ)韓国外交部長官による慰安婦問題への言及は、聯合ニュースが報じているとおり(以下報道については下記掲載「各社報道より」のリンク先参照)「日本を名指ししなかったのは[…]日本との関係に配慮したものとみられる」*1 。報道が伝えている発言は、字面だけ見れば韓国の国内問題と取れなくもない(「国際社会」はじめそうは見ないだろうが)。

  • 当要約においても、「韓国政府の優先事項であるいくつかの問題を強調した」とした中で、「戦時において犯された性暴力」とだけ採録された(どの戦時の何の性暴力なのか定かではない)。実際の発言においても「戦時中の性犯罪」(中央日報)と述べたようだが、「慰安婦問題」や「慰安婦被害者・遺族」に言及し、何の「性暴力」についてであるかは明白。ただし「日本」を外しているので、「80-90歳の高齢女性」と年齢が限定されてはいるものの(朝鮮日報)、どの「慰安婦問題」なのかは明確ではない(?)。

  • これに対し日本側は翌日、堀井外務政務官が演説を行なう。前の週の女子差別撤廃委員会で鄭鉉栢(チョン・ヒョンベク)女性家族部長官が「性的奴隷制度」発言を行ない外務省が抗議するといった一幕もあり、韓国側の態度への批判にかなりの分量を割く内容になった(関連エントリ 2018-02-22 および 2018-02-27 02:00 参照)。

  • 中央日報は「慰安婦合意以降、国際舞台で慰安婦問題について韓国政府の立場を明らかにしたのは初めて」としているが、「そんなこたぁない」(笑)。下記は2017年5月の拷問禁止委員会における韓国の定期報告レビュー会議での回答。まぁ前政権はカウント対象外(?)なのだろうが、2016年6月には、拷問禁止委員会の日本審査で、日本政府が慰安婦問題に関する「追加フォローアップ情報」を提出すると、即座に韓国政府の「立場」を説明する文書を被せてきたりもしている。「文書」提出は「舞台」での行ないでは無いし、委員会での質問への「回答」であれば、(自ら)「立場」を述べたことにはならない(?)(苦笑)。聯合ニュースも「合意に問題があったと発表してから」「国際舞台で韓国政府の立場を表明するのは初めて」としつつも、続けて「韓国政府は2015年12月の合意後、合意に基づいて国連など国際舞台で慰安婦問題に言及していなかった」としている(前の週も「言及」したばかり)。たしかに人権理事会での毎度の非難合戦で、北朝鮮慰安婦ガーとやっている横などでは控えてる様子も伺えはしたが( *1 も参照)。

  • 北朝鮮の人権の惨状に関する具体的な言及はなく、発言の程度と分量は昨年に比べて大幅に減らした」のは、「平昌冬季五輪を契機とする南北対話局面で北朝鮮を刺激しないよう「調整」したものと見られる」(朝鮮日報)が、昨年は前政権であり、文政権では何であれ批判は控え目になっただろう。午前の会合の11名とここでの16名中、ほかに北朝鮮の人権問題に言及したのはサムエルセン・デンマーク外相のみ。「最近の国際社会の動きとはかけ離れている」(同紙)というのは、本会合のここまでに関してのレポートとしては(ハイレベル・セグメントはあと二日続く)ちとオーバーだろう。「ある外交筋」とは日本?。

  • 康長官は、翌27日ジュネーブ軍縮会議でも声明を行なう。

  • 各社報道より

    • ロイター

      日本語版(2018年2月27日)

      ※ 日韓合意には言及せず。

      英語版(2018年2月27日)

      (「性奴隷」ではなく)「戦時売春宿で働くことを強いられたアジアの女性」と定義した、比較的公平なロイターの記事。日本人はアジアの女性には含まれないということなのだろうが(ジュネーブ/ステファニー・ネベハイ(Stephanie Nebehay)記者)。

      月曜に日本は、東アジアの重要な時期に二国間関係に害を与えてはならないと警告しつつ、韓国外務大臣が戦時「慰安婦」問題を国連の最高権利機関で提起した後、正式に抗議した。

      慰安婦」は、戦時売春宿で働くことを強いられたアジアの女性——多くは朝鮮人——についての日本の婉曲表現である。日本は2015年の合意のもと、女性に謝罪し、支援のために10億円(現在の940万ドル)の資金を供与したが、最近、韓国はこの問題を再検討している。

      […]

      伊原純一在ジュネーブ日本国連大使は、犠牲者中心のアプローチの要請について尋ねた記者団に語った:「それは彼らのアプローチの評価だ」。

      […]

      協定の時点でまだ生存していた47名の元韓国の慰安婦の約70パーセントがファンドからの支援を受けていた、と彼は語った。「償い金」は、フィリピンと台湾の元慰安婦にも提供されていた。

      「日本、国連で戦時「慰安婦」の韓国言及を拒否」

    • 朝日新聞(2018年2月27日)

    • 産経ニュース

      (2018年2月27日)

      (2018年2月26日)

    • 聯合ニュース

      (2018年2月27日)

       韓国外交部長官直属のタスクフォース(TF、作業部会)が昨年末、慰安婦問題を巡る韓日合意の検証結果をまとめたことを受け、合意に問題があったと発表してから国際舞台で韓国政府の立場を表明するのは初めて。

       韓国政府は2015年12月の合意後、合意に基づいて国連など国際舞台で慰安婦問題に言及していなかった。

      […]

      康氏は慰安婦問題に言及した際、日本を名指ししなかった。日本との関係に配慮したものとみられる。

      (2018年2月22日)

    • 中央日報

      (2018年2月27日)

      慰安婦合意以降、国際舞台で慰安婦問題について韓国政府の立場を明らかにしたのは初めて。その間、韓国政府は2015年12月の慰安婦合意内容に基づき、国連など国際舞台で慰安婦問題に言及していなかった。

      (2018年2月22日)

    • 朝鮮日報(2018年2月27日)

       康京和長官は同日の基調演説で、「80-90歳の高齢女性である慰安婦被害者・遺族は今も尊厳と名誉を回復するために苦労している。真実と正義の原則、被害者中心のアプローチを取るべきだ」と述べた。

      […]

      北朝鮮の人権の惨状に関する具体的な言及はなく、発言の程度と分量は昨年に比べて大幅に減らした。平昌冬季五輪を契機とする南北対話局面で北朝鮮を刺激しないよう「調整」したものと見られる。

      […]

       ある外交筋は「文在寅(ムン・ジェイン)政権になって初めて北朝鮮の人権問題に関する公の見解を国際社会に対して述べる場だったが、最近の国際社会の動きとはかけ離れている」と語った。

  • ( UN Web TV )

  • 関連エントリ

掲載URL:

https://www.unog.ch/unog/website/news_media.nsf/(httpNewsByYear_en)/3B3BC39001AC3799C1258240005DCC0F?OpenDocument


HUMAN RIGHTS COUNCIL HEARS FROM 16 DIGNITARIES AS IT CONTINUES ITS HIGH-LEVEL SEGMENT
人権理事会、ハイレベル・セグメントを継続し16名の高官から聞く

26 February 2018
2018年2月26日

The Human Rights Council during its midday meeting continued with its high-level segment, hearing addresses from dignitaries from 15 countries and one organization.
人権理事会は、昼の会合において15か国、1組織からの高官の演説を聞き、ハイレベル・セグメントを継続した。

[…]

Kang Kyung-wha, Minister for Foreign Affairs of the Republic of Korea, noted that the gap between the commitments made in the Human Rights Council and the reality on the ground was still too wide in many places. Therein had to lie the focus of the ongoing efforts to make the Council more efficient and effective.
康京和(カン・ギョンファ)韓国外交部長官は、理事会において行なわれたコミットメントと現場の現実とのあいだのギャップは、依然として多くの場所で広すぎたと指摘した。そこでは、理事会をより効率的かつ効果的にするための継続的な努力の焦点のままにしておかなければならなかった。

[…]

High-Level Segment
ハイレベル・セグメント

[…]

KANG KYUNG-WHA, Minister for Foreign Affairs of the Republic of Korea, paid tribute to High Commissioner Zeid Ra’ad Al Hussein and his staff, noting that he had been fearless and tireless in shining the piercing light of human rights, even in the most opaque and convoluted situations. She also paid tribute to the Human Rights Council as it celebrated it twelfth anniversary. However, the gap between the commitments made in the Council and the reality on the ground was still too wide in many places. Therein had to lie the focus of the ongoing efforts to make the Council more efficient and effective. The Universal Declaration of Human Rights gave powerful expression to the innate spirit of freedom and dignity that was at the core of all human beings. Unfortunately, that spirit was being suppressed, discouraged and cowered in situations of repression, protracted conflicts and terrorism, poverty and inequality, misguided nationalism and hostility towards others. The result was discrimination and marginalization, violence and hatred, further exacerbated by impunity for human rights abusers and reprisals against human rights defenders. Ms. Kang highlighted some issues that were a priority for the Government of the Republic of Korea, such as protecting the rights of women and girls, sexual violence committed in wartime, improving the human rights situation in “North Korea”, and peace on the Korean peninsula.
康京和(カン・ギョンファ)韓国外交部長官は、ゼイド・ラアド・アル・フセイン高等弁務官とそのスタッフに敬意を表し、彼が最も不透明で複雑な状況においてさえ、人権の鋭い光を照らし出すことを恐れず疲れを知らなかったことを指摘した。彼女はまた、十二周年を祝い人権理事会に敬意を表した。しかしながら、理事会において行われたコミットメントと地上の現実とのあいだのギャップは、依然として多くの場所で広すぎた。そこでは、理事会をより効率的かつ効果的にするための継続的な努力の焦点のままにしておかなければならなかった。世界人権宣言は、すべての人間の中核であった自由と尊厳の本来の精神に強力な表明を与えた。残念ながら、その精神は、抑圧の状況、長期にわたる紛争とテロ、貧困と不平等、誤解されたナショナリズムおよび他者に対する敵意の中で抑圧され、阻止され、立ちすくんでいた。その結果は、差別と疎外、暴力と憎しみであり、人権侵害者に対する免責や人権擁護者に対する報復によりさらに悪化した。康氏は、女性と少女の権利の保護、戦時において犯された性的暴力、「北朝鮮」の人権状況の改善および朝鮮半島の平和など、韓国政府の優先事項であるいくつかの問題を強調した。

[…]

ANDERS SAMUELSEN, Minister for Foreign Affairs of Denmark, said the Human Rights Council was pivotal to promoting constructive dialogue. The universal participation of Governments and civil society was a clear priority. To that end Denmark would double its contribution to the Trust Fund to support the participation of least developed countries and small island developing States. Denmark would also double its voluntary un-earmarked contribution to the Office of the High Commissioner for Human Rights. Denmark supported a democratic solution to the Myanmar crisis and stressed that perpetrators must be held accountable. It strongly condemned rights violations by the Democratic People’s Republic of Korea and the abhorrent abuses against civilians in Syria. Conflicts in Burundi, South Sudan, Yemen and Libya required full international attention. Denmark also remained concerned over the situation in Bahrain and called for the release of a Danish-Bahraini citizen currently under captivity. This year presented an opportunity to act, notably on issues such as torture, with a clear push towards the ratification of the Convention against Torture. Combatting discrimination meant that gender equity and the promotion of equal opportunities for all remained a priority. Denmark called for support as it pursued membership in the Council for the 2019-2021 session.
アンデルス・サムエルセン・デンマーク外相は、人権理事会が建設的な対話を促進するのに重要であると述べた。政府と市民社会の普遍的な参加が明確な優先事項だった。そのため、デンマークは、後発開発途上国と小島嶼開発途上国の参加を支援するための基金への貢献を倍増させる。デンマークはまた、人権高等弁務官事務所への自発的な非割当て出資を二倍にする。デンマークは、ミャンマー危機の民主的解決策を支持し、加害者は説明責任を負わなければならないと強調した。北朝鮮による権利侵害とシリアにおける民間人に対する許し難い虐待を強く非難した。ブルンジ南スーダン、イエメンおよびリビアにおける紛争は、国際的な関心を集める必要があった。デンマークはまた、バーレーンの状況を引き続き懸念しており、現在監禁されているデンマークバーレーン市民の解放を求めた。今年は、拷問禁止条約の批准に向けた明確な行動により、特に拷問などの問題についての活動の機会を与えた。差別との戦いは、ジェンダー平等とすべての機会均等の促進が残された優先事項であることを意味した。デンマークは、2019年 - 2021年期の理事会におけるメンバーシップを求め、支援を要請した。

[…]


2018年2月27日

*1: 下記は2015年12月の合意後、初の(第31回)人権理事会ハイレベル・セグメントにおける尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官の変貌ぶりを報じるハンギョレ(2016年3月4日)。※ その横で合意反対派も激しいロビー活動を展開。