dancept1の備忘録

答弁権のエソロジー

「共謀罪法案」についてのプライバシーに関する特別報告者と日本政府とのコミュニケーションの状況

文書番号:(無し)

ノート:

  • 人権高等弁務官事務所ホームページの「プライバシーに関する特別報告者」ページ「ハイライト」に、「説明(CLARIFICATION)」と題された、安倍総理とグテーレス国連事務総長の懇談で言及された、特別報告者の立場に関する件についての文書がアップされていたので訳出。※ 野党が取り上げた、プライバシーに関する特別報告者の公開書簡への日本政府見解(抗議)に対する「反論」(こちら)、またはそれに類する文書は掲載されていない。
  • 文書番号はともかく、宛先も日付もない。文書のプロパティを調べると、
    2017/06/02, 11:27:00, Christophe PESCHOUX
    とあった。軽くググってみると、最初にヒューマン・ライツ・ウォッチの氏のページが出てきてヲヲッとなったのだが、氏のタグが付いた記事を掲載していたということだった。以前カンボジアの人権高等弁務官事務所のディレクターを務めていた方らしい。
    カンボジア:国連事務所の閉鎖は権利の取り組みを脅かす」(2010年10月29日)なお、クリストフ・ペシュー(著)、友田錫(監訳)『ポル・ポト派の素顔』(1994年、日本放送出版協会)という書籍が出ていた。
  • 内容的には、テロ等準備罪に関しての日本政府との「コミュニケーション」そのものには言及しておらず、シチリア国連事務総長安倍総理に行なった特別報告者に関する説明に対して、事務総長の広報担当事務局ブリーフィングの内容などを加えて補足。日本政府向けということか。それなりに騒ぎが大きくなったので出されたのだろうが、軽くみてもらっちゃ困るというところ。けっこう嫌味な内容 *1
  • ことシチリアの件に関しては、東京新聞が5月30日に報じている通り、日本政府が自国寄りの部分をやや強調して発表した感はある。国際社会では別段普通のことだろうし、国連のプレスリリースの内容から大きく逸脱した解釈ともおもわないが。国連のプレスリリースは、日本政府の発表を受けた記者の質問に答えて当たり障りのない方向へ軌道修正、という表現は大袈裟なら念押ししたという印象。
  • 各紙の報道
    上記に先立ち「約10分間」の「懇談」(外務省、下記)が行われた27日当日、各紙「事務総長「国連の総意でない」」と報じているが、「日本政府の説明によると」と注釈を入れていたのは下記では朝日新聞のみ。それなりの「ニュース」なので落とす訳にはいかず、第一報としてはこんなもんかもしれないが二報があるとも限らず、産経もこのような書き方(断定的)をするときは特にニュースのソースを明記してもらいたい。現地に派遣した記者が報じているが、外務省のホームページの引き写しでも同じである。
  • 外務省の発表(外務省ホームページ)
    外交政策」 > 「日本の安全保障と国際社会の平和と安定」>「国連外交」>「日本と国連」> 外務省声明(2017年5月27日)
  • 東京新聞が引用した国連事務総長のプレスリリース(国連事務総長ホームページ)「記者へのノート」(2017年5月28日/ニューヨーク)

    記者へのノート:事務総長と日本の安倍総理とのあいだの会談に関する質問に対して

    事務総長と日本の安倍総理とのあいだの会談に関して受理した質問に対して、広報官は次のように発言:

    事務総長と安倍総理は、シチリアでの会談で、いわゆる「慰安婦」問題について議論した。事務総長は、これが日韓合意によって解決されるべき問題であることに同意した。事務総長は、この問題の解決の性質と内容を定義することは両国に任されているという原則以外、特定の合意の内容には言及しなかった。

    特別報告者の報告書に関して、事務総長は首相に対し、特別報告者は、独立した人権理事会に直接報告を行なう専門家であると述べた。

  • 本「説明」文書に引用された、国連事務総長広報担当のブリーフィングでの日テレ記者とのやり取り(国連事務総長広報担当事務局ホームページ)
    「リソース」→「日次プレス・ブリーフィング」(2017年5月30日)
  • 日韓合意については、外務省が事務総長は合意を歓迎、としているのに対し、事務総長広報官は翌日の記者の質問に特定の合意の内容には言及しなかったと答えている。ただし前任者の潘基文(パン・ギムン)事務総長は、日韓合意について「歓迎」の声明を出していた(下記 2015-12-28 エントリ参照)。
  • 関連エントリ。

掲載URL:

http://www.ohchr.org/Documents/Issues/Privacy/ClarificationAntiConspiracyBill.docx


CLARIFICATION:
Status of SRP's Communication to the Government of Japan
concerning the "anti-conspiracy bill"
説明:
共謀罪法案」についてのSRP[プライバシーに関する特別報告者]と日本政府とのコミュニケーションの状況

"The Special Procedures of the Human Rights Council are independent human rights experts with mandates to report and advise on human rights from a thematic or country-specific perspective. The system of Special Procedures is a central element of the United Nations human rights machinery and covers all human rights: civil, cultural, economic, political, and social. As stated in his letter of 18th May 2018 addressed to the Prime Minister of Japan, concerning the proposed adoption of a anti conspiracy legislation, Mr. Joseph Cannataci wrote in his capacity as Special Rapporteur appointed by the Human Rights Council to develop the UN mandate on the right to privacy, which was established by Human Rights Council resolution 28/16.
「人権理事会の特別手続は、独立した人権専門家であり、テーマ別または国別の観点から人権に関する報告と助言を行なうマンデートがある。特別手続のシステムは、国連人権機構の中心的要素であり、市民的、文化的、経済的、政治的、社会的のすべての人権を対象としており、日本の首相に宛てた共謀罪法案の採択についての2018年5月18日の書簡において表明したように、ジョセフ・ケナタッチ氏は、人権理事会決議28/16によって制定されたプライバシー権に関する国連のマンデートを進展させるために人権理事会によって任命された、特別報告者としての立場において書いた。

The mandate was created, inter alia, “to gather relevant information, including on international and national frameworks, national practices and experience, to study trends, developments and challenges in relation to the right to privacy and to make recommendations to ensure its promotion and protection, including in connection with the challenges arising from new technologies." (Text of the resolution: http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=A/HRC/28/L.27).
このマンデートは、とりわけ、「国際的および国内的な枠組み、国内の実務および経験を含む関連情報を収集して、プライバシーの権利に関する動向、開発および課題を調査し、新しい技術から生まれる課題に関連するものを含むその促進および保護を確実にするための勧告を行う」ために制定された(決議文:http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=A/HRC/28/L.27)。

The Human Rights Council, of which Japan is member, has reaffirmed the obligation of States to cooperate with the Special Procedures, and the integrity and independence of Special Procedures. It also reaffirmed the principles of cooperation, transparency and accountability and the role of the system of Special Procedures in enhancing the capacity of the Human Rights Council to address human rights situations.
日本がメンバーである人権理事会は、特別手続との締約国の協力義務、特別手続の一貫性と独立性を再確認した。また、人権理事会の人権状況に対処する能力を強化する上で、協力、透明性および説明責任の原則ならびに特別手続のシステムの役割を再確認した。

When Japan presented its candidature to the General Assembly to become a member of the Human Rights Council for the period 2017-2020, it underlined "the great importance" it attached "to the role of the Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights and the Special Procedures", adding that "Japan will continue to offer its full cooperation to realise meaningful and constructive dialogues with thematic mandate-holders." (A/71/165, 20 July 2016).  
日本は、2017年から2020年任期の人権理事会のメンバーになるために総会に出席した際、「人権と特別手続きに関する国連高等弁務官事務所の役割に」「大きな重要性」を置くと強調し、 「日本は、テーマ別マンデート保持者との有意義かつ建設的な対話を実現するため、引き続き全面的な協力を行う。」と付け加えた(A/71/165、2016年7月20日)。

On 28 May 2017, in response to questions on the meeting between the Secretary-General and Prime Minister Abe of Japan, regarding the reports of Special Rapporteurs: the Secretary-General told the Prime Minister that Special Rapporteurs are experts that are independent and report directly to the Human Rights Council. (See United Nations Secretary General: Office of the spokesperson's Note to Correspondents: https://www.un.org/sg/en/content/sg/notes-correspondents).
2017年5月28日に、事務総長と日本の安倍総理との間の会談において、特別報告者の報告に関する質問に応じて事務総長は、特別報告者は、独立して人権理事会に直接報告する専門家であると首相に述べた。(国連事務総長:広報担当事務局の記者へのノート:https://www.un.org/sg/en/content/sg/notes-correspondents 参照)。

Further clarification by the United Nations Secretary General's spokesperson office concerning UN Special Procedures:
国連特別報告者に関する国連事務総長の広報担当によるさらなる明確化:

Question:  My name is Hiromoto from Nippon Television.  I'd like to also ask you about the discussion when SG [Secretary-General] and Mr. Prime Minister Abe.  And, according the press statement on 28 May from UN, SG said to Mr. Prime Minister, regarding… about the special reporters… regarding that report of special reporters, the Secretary‑General told Prime Minister that special reporters are expert on independent and report directly to the Human Right Council.  My question is this statement… is this everything that the SG told the Prime Minister about the special reporters?
質問:日本テレビの広本です。事務総長と安倍総理大臣の議論についてもお聞きしたい。国連からの5月28日の記者声明によれば、事務総長は首相に、特別報告者について…関して...特別報告者の報告に関して、報告者は独立した専門家で人権理事会へ直接報告すると事務総長は首相に話した。私の質問はこの声明で...特別報告者について事務総長が首相に話したのはこれがすべてか?

Spokesman:  That's the gist and the… and what the Secretary‑General told him.  I mean, the… you know, we talk often about Special Rapporteurs here.  Special Rapporteurs have a critical role to play in the human rights architecture of the UN system.  But, they do not report to the Secretary‑General of the United Nations.  He does not appoint them.  He does not set their mandates.  Their mandates are set by the Human Rights Council.  They're appointed by the Human Rights Council, and they report to the Human Rights Council, and they are independent experts.  That's just a fact.
報道官:それが要点であり…事務総長が彼に話したことである。要するに…知ってのとおり我々は特別報告者についてここでよく話す。特別報告者は、国連システムの人権擁護構造において重要な役割を果たす。しかし、彼らは国連事務総長には報告しない。彼は彼らを任命しない。彼は彼らのマンデートを定めない。彼らのマンデートは人権理事会によって定められる。彼らは人権理事会によって任命され、人権理事会に報告する。彼らは独立した専門家である。それは単なる事実である。

Question:  I have one more question.  According to the brief made by Japanese Government, they said SG told that the reporter's view do not necessarily reflect opinion… opinion of the United Nations.  Is this true?
質問:もう一つ質問がある。日本政府作成の要約によると、報告者の見解は必ずしも意見…国連の意見を反映していないと事務総長が話したと述べた。これは本当か?

Spokesman:  I think I just answered your question.  There are independent rapporteurs who have specific mandates, and they report to the Human Rights Council.  Evelyn?
報道官:私はちょうどあなたの質問に答えたと思う。具体的なマンデートを有する独立した報告者がおり、彼らは人権理事会に報告する。エヴリン?[次の質問者]


2017年7月29日

*1:追記)その後、当初の公開書簡に対する日本政府の回答が公開されたが(2017年8月17日)、冒頭「1 はじめに」において、

(1)国際社会において責任ある立場にある我が国は,これまでも国連人権理事会特別報告者との有意義かつ建設的な対話を実現し,その報告が,客観的で正確な情報に基づき,正しい理解の下になされるよう,特別報告者制度に全面的に協力してきたところであり,そのような我が国の基本的な姿勢はこれからも不変である。
と述べている。なお最後の「6 結語」では、前回の「見解」の際と同様の抗議を行なっている。
[…]なお,疑問がある場合には,今回のように法案の作成者である我が国政府に法案の内容を問い合わせることも説明の機会を与えることもないまま,主権国家である我が国の民主主義プロセスの中で活発な議論がなされている直中の重要法案に対し,公開書簡の形で一方的に意見を公表するのではなく,外交チャネルを通じた正規のルートで問い合わせいただければ,今後,直接説明する用意がある。
カンナタチ国連人権理事会の「プライバシーの権利」特別報告者の指摘に対する回答(和文(PDF)/英文(PDF)